ログイン   【モバイル版】ログイン   資料お申込み

自分と向き合う姿勢を養うには「3グットシングス」が最適。
Willysmは健康経営を推進するための一助となるツール

CHO主催行事ソフトボール大会参加と家族バーベキュー
CHO主催行事ソフトボール大会参加と家族バーベキュー

企業プロフィール
社会福祉法人 三浦市社会福祉協議会

社会福祉法人三浦市社会福祉協議会は、人口約4万2,000人を擁する神奈川県三浦市域において、「地域福祉の推進」を目的に地域の様々な福祉課題の解決に取り組んでいます。事務所のある建物「安心館」には、社会福祉協議会の根幹である総合相談を中心にボランティアセンターや在宅介護事業、就労支援事業など事業展開をしています。その他福祉団体などに対する助成事業、生活困窮者への資金貸付事業、高齢者・障害者の権利擁護事業、障害者総合支援法による事業など、三浦市民の福祉を支える事業に尽力しています。また、共生サービスセンター「暖館」とリハビリ型デイサービス「どんどん!デイサービスセンター」も当会の施設で、この3拠点には神奈川県から健康づくりの拠点として、「未病センター」の認証を受けており、三浦市の地域包括ケアシステムの構築に努めております。
https://www.shakyo-miura.com/

Interviewee:三浦市社会福祉協議会 事務局長、介護従事者等人材育成・研修センター所、CHO 成田慎一様(※写真左端)

――Willysm を導入したきっかけをお聞かせください

 導入したのは2016年4月なのですが、その頃、神奈川県がCHO(健康管理最高責任者)構想を推進していました。CHO構想というのは、企業や団体などが従業員やその家族の健康づくりを企業経営の一部として位置づけて健康経営を進めることで、結果として企業の経営価値向上に役立てるという取り組みです。この取り組みが私たちの運営にリンクしてくるのではないかと思い、注目していました。

 社協は高齢者の介護問題や生活困窮への対応など、地域福祉全般の相談窓口として前面に立って行っているところですが、なかなか一般の方には馴染みのない機関であったと思います。昨年から続くコロナ禍で生活が困窮された方への特例貸付の窓口を担うようになったことや、フードバンクの機能も持ち、アルバイトができず収入が減ってしまった学生たちにに食料の配布などを行っていることから、全国的に周知されるようになったのではないかと思います。

 市役所の外郭機関だと思われている節がありますが、あくまでも民間の組織です。但し、社会福祉法人でもあります。ですから、一般企業以上に、健全な経営はもちろん、職員の心身の健康やモチベーションの維持にも当然気を配る必要があるわけです。

 当会でCHO構想を推進するにあたって、いろいろ調べていく中でWillysmの存在を知りました。地域福祉の担い手である私たちが心身ともに健康でなければ、十分な支援は行えません。そこで、職員のモチベーションの維持につながるということを重視し、すぐにWillysmの導入を決めました。

――利用者数や利用状況などを教えてください

 登録している職員は90名近くになります。実際に活用しているのは、その半数くらいでしょうか。
 メンタルの不調で職員が辞めてしまう、あるいは休職するということは少ない職場なので、メンタル不調の早期発見というよりは、モチベーションにつなげるツールとして利用できればいいと思っていました。

 導入当初は各拠点に専用のパソコンを用意し、職員が帰りがけに入力していたのですが、帰宅時はどうしてもせわしなく、バタバタしてしまいます。そこで導入して1、2年後にスマホで入力できるようにしたところ利便性がよくなり、人によってはゲーム感覚で気軽に利用しているようです。
 私は以前、帰りの電車内で入力していました。通勤時間や帰宅して一休みしている時に入力できれば、一番いいのではないかと思っています。

――導入後の反応はいかがですか

 導入時には職員向けに導入の目的はきちんと話しました。「導入されたので、とりあえずやってみよう」という反応の職員がほとんどで、当初は7割、8割くらいの人が使っていたように思います。
 利用率は減りましたが、利用状況を見る限り、気持ちの3色を入力する際に「今日は良かった」とか「イマイチだった」と具体的に自分なりに振り返りができている人は、「3グットシングス」もうまく活用していると感じます。

 Willysmの機能では「3グットシングス」が非常に優れた機能だと思っていて、これをうまく活用している人は、日々の生活においても割と前向きのような気がします。今日仕事がうまくいかなかったり、家庭内で何かあっても、「3グットシングス」で振り返ることで明日に向けて改善できていくならば、それがWillysm本来の使い方ではないかと、私は思っています。

――印象に残るエピソードがありましたら、お聞かせください。

 以前、ずっと赤を入力していたことが気になって声がけしたら、やはり家庭内で問題があったことが分かりました。「ストレスチェック」とはまた違うと思いますが、そういった問題に気づけるという点でも有益なツールだと思っています。

 感心したのは、スマホが使えなくても手描きでWillysmの機能を利用している人が2名いたことです。1名は年齢で退職してしまいましたが、もう1名は、毎月カレンダーのような表に気持ちの3色から選んだ色を塗り、空欄には「3グッドシングス」をちゃんと書いてくれる人がいるのです。こういったアナログでの手作業も大切なことかもしれません。

 当会では毎年、Willysmへの入力を点数化して、点数が一番高い人を新年の祝賀会で表彰しているのですが、その手描きで提出してくれる人は2回ほど表彰されています。市内の団体の方などを招待して行う当会のイベントであるため、お招きした皆さんから健康経営のためにWillysmを活用し、職員を表彰するという活動は高く評価されています。

 また毎月、職員の健康チェックをする安全衛生委員会があるのですが、その委員会のメンバーの職員が、大学の教授が書いた文章を引用し、「3グッドシングス」の効果について発表していました。当会は神奈川県のCHO構想推進事業所であり、私は今CHOという責任者なのですが、私以外の人がモチベーションマネジメント機能の効用に気づいて発表したことは、とてもいいことだと思いました。職場の末端までに広がっていくためには、それぞれが“自分事化”して発信していくことが大切だと思っています。何事も“自分事化”することは重要ですね。

CHO表彰の記念撮影

――課題があるとしたら、どんなことでしょうか

 事業所内の課題としては、利活用が止まっている職員をいかにして7割、8割にまで回復するかということです。仕事に対してポジティブに向き合えるようになるツールだということを再認識してもらいたいし、経営側としてはメンタル不調につながらないためのツールとしても、もっと活用していかなくてはと考えています。

 仕事上の問題はなくても、家庭上のことでは大なり小なりトラブルを持っている人がけっこういると思うのです。気持ちの色や「3グッドシングス」を入力することによって、何らかの解決の糸口を見つけられれば、それは当然仕事へのモチベーションにもつながっていきます。
 「Willysmを活用することが、生活での前向きな発想にもつながる」という話はしているので、それが利用率に反映されればいいのですが。

――Willysmの機能にさらに求めるものはありますか

 機能で求めるものはありません。「3グッドシングス」は本当にいい機能なので、もっと広く認知されてほしいと思っているくらいです。

 神奈川県が運営するアプリに、日々の様々な健康情報を記録する「マイME-BYO(みびょう=未病)カルテ」があります。私はそのアプリに何とかしてWillysmを搭載してほしいと思っていたのですが、県の予算の関係などもあり、実現しませんでした。
 Willysmは「未病」というキーワードにも、非常に相性がよいと思っています。自治体の健康推進施策などと絡められれば、Willysmのよさが多方向に広がっていくと、今でも思っています。

 ですから、私からサイオステクノロジーさんにお願いしたいのは、今こそ必要なこのツールをもっと広めていただきたいということです。大きな波というか、ムーブメントを起こしていただけるとありがたいです。では、それをどうやってするかは、すみません、自分では思い付かないですけど(笑)。

――最後に、今後の展望をお聞かせください

 地域づくりをやっている団体なので、まずは私たちが心身ともに健康であるために、今後も継続してWillysmを活用させていただきながら、それをどう地域に活かすか。地域の人にも心身ともに健康になってもらうために、、我々がWillysmの要素をいかに皆さんにお届けできるかが重要なポイントだと考えています。

 三浦市の高齢化率は高く、市民の4割が高齢者です。高齢者のフレイル(加齢や疾患、心身のストレスなどによる虚弱状態)予防などにはWillysmの要素も入っていて、それを実施してきたわけですが、課題は高齢者以外の方、障がいがある方、多くの生活困窮の方などへの対応です。

 コロナ禍の自粛生活の中で、特にメンタルの面で不調をきたしている方や、モチベーションの維持が難しくなっている方が増えているので、そういった方に対して前向きな気持ちを持ってもらえるような活動を、今後さらにしっかり実施していきたいと思っています。

――ご協力、ありがとうございました(Willysmスタッフ一同)

三浦市社会福祉協議会CHO構想のWebページ(https://www.shakyo-miura.com/wordpress/cho/)では、取り組みの一環としてWillysmをご紹介いただくなど、長年お引き立ていただき御礼申し上げます。
我々スタッフ一同、引き続きご支援させていただきますので、今後とも、何卒宜しくお願いします。 ご協力、ありがとうございました。

※感染症予防の一環で、オンラインによるインタビューをさせていただきました。


今回は、従業員のコンディション把握の重要性について、メンタルヘルス対策の観点、労務管理の側面から考えてみたいと思います。

<メンタルヘルス対策はなぜ重要か?>

 まず初めに職場におけるメンタルヘルス対策がなぜ重要なのかを考えてみたいと思います。
 メンタルヘルス不調がもたらす影響としてイメージしやすく、よく知られているのは、メンタルヘルス不調を理由とする従業員の休職だと思います。一旦休職が決まれば休職する従業員の仕事の部署内での振り分け、代替要員の確保といった工数が発生します。また、メンタルヘルス不調による休職は急遽発生することが多いため、上司や人事部門が他の仕事よりも優先して対応することになり、他の業務の予定が狂ってしまうことも珍しくありません。休職した従業員の周りの同僚への精神的な影響も少なくないことを考えると、休職者の発生が職場のパフォーマンスに及ぼす影響は甚大であると言えます。

 休職に至らないまでも、メンタルヘルス不調により仕事の能率が低下する、事務ミスが多くなるといったことによる影響も考えられます。仕事上のトラブルやミスが多発した従業員がメンタルヘルス不調を感じながら勤務していたということも多くあります。つまり、メンタルヘルス不調は、企業の信頼にも直結する業務品質や顧客満足度の低下にもつながる得るリスクとも言えるのです。

<メンタルヘルス対策の進め方の基本>

 以上で説明したようなメンタルヘルス不調がもたらす職場のパフォーマンス低下や企業の信頼失墜にもつながりかねない出来事の発生を避けるためにも、メンタルヘルス対策は非常に重要と言えるのです。
 メンタルヘルス対策を進めるにあたっては、一次予防、二次予防、三次予防という考え方にもとづくことが国の指針によって推奨されています。

 一次予防はメンタルヘルス不調の未然防止、二次予防はメンタルヘルス不調の早期発見、三次予防は復職支援になります。このうち、三次予防の復職支援は人事部門が主に関与することが多いことから、職場で働く管理職や従業員にとって重要度の高い一次予防、二次予防について以降で説明したいと思います。

<一次予防によるメンタルヘルス対策>

 メンタルヘルス対策の一次予防を進めるにあたっては、セルフケアがポイントになります。セルフケアとは、「自分の心の健康を自分で管理する」、「ストレスに気づいて適切に対処する」ことです。具体的には、イライラする、集中できない、疲れやすいといった気持ちを感じた時は、休みを入れる、そういった状態が続くようであれば、必要に応じて、専門家に相談するといったことです。定期的に運動する習慣を持つ、ストレス解消のための趣味を持つといったこともメンタルヘルスを良好に保つ工夫と言えますので、セルフケアに含まれると言えます。

 しかし、毎日の仕事に追われる中で、そういったセルフケアの意識を持ち続けるのは、なかなか難しいのも現実です。最近は新入社員の際のメンタルヘルス研修でもセルフケアが扱われることが一般的ですが、時間が経つと「そう言えば習った」という意識の従業員が現実には多数であると思います。その意味で、Willysm(ウィリズム)のように、一日1回立ち止まって自分と向き合う時間を取ることは、セルフケアの機会になると言えます。朝の業務開始時に自分の気持ちを回答しようとしても、これまでは気軽に回答していたのに、ここ最近気持ちが進まないといったことがあれば、自分の変調に気づく機会になると言えます。

<二次予防によるメンタルヘルス対策>

 次にメンタルヘルス対策の第二次予防、つまり早期発見の観点から述べたいと思います。

 早期発見の役割が期待されるのは管理職によるラインケアです。ラインケアとは、上司が部下の身なりや仕事ぶり、あるいは表情や受け答えの状態などによって部下のメンタルヘルスの状態を把握し、必要な場合には産業医や保健師といった専門家につなぐ活動を指します。おそらく近年は管理職研修の内容にラインケアに関する研修が取り入れられている企業も珍しくないと思います。

 コロナ禍以降に普及したリモートワークにおいては、PCの画面越しには表情や服装、雰囲気からメンタルヘルスを把握することが難しいことから、そうした従来型のラインケアが難しくなっています。その意味で、Willysm(ウィリズム)のようなコンディション把握のツールの重要性が増したと言えるでしょう。従業員がありのままの状態を回答すれば、それを上司が把握することにより、部下の変調に気づきやすくなると言えます。

 さらに、リモートワーク下での管理職によるラインケアの難しさに追い打ちをかけているのが、管理職自身が大きな業務負担をかかえている点です。プレイングマネージャーとして、部下のマネジメントもしながら、自らも営業成績の一端を担うといったマネージャーの姿も稀ではありません。管理職のみに従業員の体調の配慮や気づき、メンタルケアを求めるのは厳しいと言えます。

 そこで、Willysm(ウィリズム)のようなツールを導入して、同僚同士がお互いの体調を気にし合い、場合によっては労りや励ましの声を掛け合うきっかけとすることも、メンタルヘルス不調の早期発見につながる取り組みとなり得ると考えられます。たとえば、リモートワーク下でそれまで毎日回答していた同僚が、回答しない日が増えたといったことから、同僚がオンラインMTGを持ちかけて、その結果、メンタルヘルス不調を感じていることが発覚するということがあるかもしれません。

 このような職場での支え合い、人と人とのつながりは、学術的にはソーシャル・キャピタル(社会関係資本)とも言われて注目を集めています。このソーシャル・キャピタルが良好な職場では従業員の仕事のパフォーマンスが高いことや、ウェルビーイングやメンタルヘルスが良好であるといった結果が数多く報告されています。

 これまでの「管理職→個々の従業員」という従来のラインケアの発想から、職場を共にする者同士として、お互いのメンタルヘルスについても気にし合う、必要な場合には支え合うという新しい形のメンタルヘルスケアがリモートワーク下においては特に求められていると言えるかもしれません。

<労務管理の観点からのコンディション把握の重要性>

 最後に、若干堅くなりますが、労務管理の観点から、コンディション把握の重要性について述べたいと思います。
 まず、先ほど挙げた管理職によるラインケア、特に従業員のコンディション把握は、法的には企業による安全配慮義務の履行という意味でも重要です。安全配慮義務は、労働契約法という法律に「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められています。平たく言えば、使用者は労働者の安全と健康に配慮する義務が課せられているということです。

 安全配慮義務は、もともと過労死等による裁判が多くなされる中で確立された裁判所の考え方でしたが、労働契約法という法律ができて、その中に明文化されたという経緯があります。ニュースで見聞きする、過労死、過労自殺、パワーハラスメントによるメンタルヘルス不調といった事案においては、この安全配慮義務違反が労働者から使用者である企業に損害賠償を求める根拠になることが一般的です。

 したがって、従業員の体調コンディションをしっかり把握し管理するというのは労務管理の基本であると同時に企業の安全配慮義務違反による訴訟リスクを低下させる上でも重要と言えます。

 一方で、自己保健義務という考え方も重要です。これは、労働者自身も職場で健康に働くために企業の健康の保持増進の取り組みに協力する等により心身の健康の維持に努めなければならないという考え方です。年に1回の定期健康診断が企業に実施義務があるのみならず、従業員側にも受診義務があるのはこの考え方に基づいたものです。

 つまり、コンディション把握は経営層や管理職に安全配慮義務の履行の一環として求められるものですが、従業員自身にも自己保健義務により、企業の健康増進のための取り組みや働きかけに協力して、コンディションの把握と管理が求められていると言えます。Willysm(ウィリズム)のようなツールを導入することは、企業が安全配慮義務を果たし、従業員も自己保健義務を果たすことに役立つツールとも言えるでしょう。

<解説>

宮中大介(Daisuke Miyanaka)先生
宮中大介(Daisuke Miyanaka)先生

宮中大介先生 プロフィール

株式会社ベターオプションズ代表取締役、慶應義塾大学特任助教。
行動科学とデータサイエンスを応用したサービス開発を専門領域とする。格付会社にてアナリスト、EAP会社にてサービス開発部門長を経験し独立。東京大学大学院医学系研究科修了(公衆衛生学修士)。大学でポジティブ心理学やメンタルヘルスの研究にも従事している。

<そもそもエンゲージメントとは?>

 今回は、最近耳にすることが増えたエンゲージメントについて解説したいと思います。
 まず、「エンゲージメント(engagement)」という言葉ですが、一般には「婚約」というイメージが強いと思いますが、昨今話題になっているエンゲージメントは、「ある活動に関わっているという感情」という元々の意味から発展して、仕事や組織との強い結びつきの感情を表す概念です。
 たとえば、調査会社のGallup社による「エンゲージしている日本人労働者はわずか9%」という調査結果においては、エンゲージとは「情熱を持って働き、会社と深い結びつきを感じている」と定義されています。

https://news.gallup.com/businessjournal/17242/grim-news-japans-managers.aspx

 一方で、同様に著名な人事コンサルティング会社のWillis Towers Watson社の「従業員エンゲージメント」の定義を見てみると、「雇用主との従業員と関係性の強度」として定義されていることが分かります。

https://www.willistowerswatson.com/en-IE/Insights/2021/04/what-is-employee-engagement

 このように、エンゲージメントという言葉は、調査している企業によって定義が若干異なっており、統一した概念となっていないのが現状です。
 人材開発や組織開発の分野においては、学術的な概念がそのまま実務の世界に輸出されることが多いのですが、エンゲージメントの場合、コンサルティング会社等の実務家サイドが学術知見を参考にしながらエンゲージメントという概念を使い始め、学術界では2000年以降にエンゲージメントに関する研究報告が増えてきたという経緯があります。そのため、学術分野においてもエンゲージメントに関する統一した定義が存在していないのが現状です。

<なぜ今エンゲージメントが注目を集めているか?>

 エンゲージメントという言葉が現在注目を集めている理由の1つには、日本企業の国際競争面での厳しさが増すなか、競争力の低下の原因を日本人のエンゲージメントの低さに求める点があるかと思います。
 また、企業の年齢構成の高齢化が進む中で、シニアになって経験を生かして活躍している従業員が存在する一方で期待に添えない従業員も存在する状況があり、そうした状況を説明する一つの理由として人事部門中心にエンゲージメントに着目し始めたというのも理由としてあるように思います。

 さらに、2020年のコロナ禍以降に急速に普及下したテレワークもエンゲージメントが注目を集めるのに一役買ったと言えます。これまでは職場で皆が働いているため上司が部下の働きに対して目を光らせることができましたが、テレワーク環境では、仮にこれ幸いとサボっている従業員がいたとしても、管理が難しいのが現状です。企業としてはテレワーク環境のような会社の目が届かない環境下でも、自律的に仕事に打ち込むような従業員が欲しいということで、エンゲージメントに注目が集まっている可能性もあります。

<学術面から見たエンゲージメント>

 ここからは、少々複雑なのですが、学術の世界でエンゲージメントがどのように扱われているか紐解いてみたいと思います。
 職場でのエンゲージメントという言葉を最も早い時期に概念化したと思われるKahn(1990)は、従業員がエンゲージした状態を「物理的にも、認知的にも、感情的にも完全に仕事の役割と結びついている」と表現しています。
 エンゲージメントに関連する概念として学術的に最も研究が進んでいるのが、Schaufeli(2002)によって提唱されたワーク・エンゲージメントという概念です。ワーク・エンゲージメントとは、仕事にエネルギッシュに取り組み(活力)、仕事に深く関与し(熱意)、仕事に夢中でのめりこんでいる状態(没頭)を指します。仕事に強迫的に取り組むワーカホリズムとは異なる概念としても整理されています。

 実務においては、先ほどのGallup社やWillis Towers Watson社のように、エンゲージメントを従業員と雇用主(組織)との結びつきと捉えたり、仕事と組織との結びつきを両方含んでいる場合がありますが、学術的には、仕事との結びつきとして概念化されていることが一般的です。
 組織との結びつきを表すエンゲージメントは、学術的には、エンゲージメントよりも組織コミットメントという概念で長く研究されてきた経緯があります。

 組織コミットメントに関しても多くの研究者による定義があるのですが、良く知られているのは、Meyerら(1993)による、3つの側面から構成される組織コミットメントの定義です。Meyerらは、組織コミットメントは、「従業員と組織の関係性を特徴づけるものであり、組織に居続けるかどうかの決断を示す心理的状態」と定義し、情緒的、継続的、規範的の3側面を有するとされています。特に、「従業員の組織への情緒的・感情的な結びつき」を指す、情緒的側面が、組織との結びつきを表すエンゲージメントに近い概念と言えます。具体的に言えば、組織に対する愛着を感じていたり、自己と組織を同一視している、組織に積極的な関与している状態が情緒的な組織コミットメントが高い状態と考えられています。

 以上に述べたように、実務的には、エンゲージメントという言葉が、仕事と組織双方との結びつきを意味していたり、組織との結びつきを意味していることが多いのですが、学術的には両者が区別されており、エンゲージメントとしては仕事に対する結びつきを指すことが多いというのが現状と言えます。

<エンゲージメントが高いと何が良いのか?>

 従業員の高いエンゲージメントが何をもたらすかについては、調査会社等による科学的な検証は非常に少なく、学術分野での検証が圧倒的に多い状態です。中でも、ワーク・エンゲージメントに関しては世界中の研究者が研究しており、ワーク・エンゲージメントが高い従業員は仕事のパフォーマンスが高いことがさまざまな研究によって報告されています。

 ワーク・エンゲージメントと仕事のパフォーマンスとの関連を検討する研究においては、自己申告の仕事のパフォーマンスが用いられることが多かったのですが、最近では実際のビジネスの業績等との関連も明らかになっています。たとえば、日本の小売店舗で働いている従業員を対象にした研究においても、従業員のワーク・エンゲージメントの平均値が高い売り場では、売上高が高いが、職場のワーク・エンゲージメントのばらつきが大きいほど、売上高は低くなるという大変興味深い結果が報告されています。

https://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/21090004.html

 組織との結びつきを表すエンゲージメントに関しては、組織コミットメントの研究として検証されており、組織コミットメントが高い従業員は、仕事のパフォーマンスが高く、離職しづらいといった結果が得られています。
 さまざまな研究報告を考慮すると、従業員のエンゲージメントが高いことが組織にとってビジネス上の望ましい結果をもたらすと言えます。

<エンゲージメントを高めるには?>

 ここからは、エンゲージメントをどのように高めることが出来るかについて述べたいと思います。これについても、調査会社等による科学的な検証は非常に少ない状況ですので、学術的には研究が進んでいるワーク・エンゲージメントについて述べたいと思います。ワーク・エンゲージメントを高めるには、個人の資源と仕事の資源を高めることが良いとされています。

 個人の資源とは、自己効力感、レジリエンスや楽観性という個人に備わってる心理的な特性です。自己効力感は「自分は出来る」という気持ち、レジエンスは苦境から立ち直る力、楽観性はポジティブな見方をする力です。こういった力を持っている人はワーク・エンゲージメントが高いことが分かっています。

 これに対して、仕事の資源は、仕事に紐づくもので、仕事の裁量度、仕事のやりがい、上司同僚との良好な関係性などがあると考えられています。裁量度の高い仕事で働き、仕事でやりがいを感じ、上司や同僚から支援を受けられる従業員はワーク・エンゲージメントが高いことが分かっています。

 現在では、以上の知見を応用して、ワーク・エンゲージメントを高めるための様々なプログラムやトレーニングが開発されています。実施方法も集団研修方式や、WEBアプリ等さまざまな方法が試みられている状況です。現在はそうしたプログラムやトレーニングの効果も学術的に検証されており、ワーク・エンゲージメント向上に効果があったとされているものも相当数あるというのが現状です。

 組織との結びつきを表すエンゲージメントに関しては、組織コミットメントの研究を参考にすると、自律性が高かったり、挑戦的な仕事であること、上司や同僚との関係性が良好であること、組織サポートや上司のリーダーシップが充実していること、組織が公正であること等が組織コミットメントの高さと関連していることが報告されています。

<エンゲージメントを高める実践>

 以上を踏まえて、エンゲージメントを高めるために出来ることをまとめると、上司と部下、同僚同士のコミュニケーションを良くすること、管理職のリーダーシップを強化することが挙げられます。また、従業員に裁量度や自律性の高い仕事を用意する、挑戦的な仕事を与えるといったこともエンゲージメントを高めることにつながると考えられています。これらに共通するのは部下に仕事を割り当てて職場をマネジメントする管理職の役割であり、エンゲージメントを高めるキーパーソンは管理職だと言って良いと思います。

 加えて人事部門の役割も重要です。管理職を対象にエンゲージメントを高めることを意識したマネジメント研修等を実施することも重要と考えられます。組織風土もエンゲージメントと関係がありますので、組織開発を司る人事部門がエンゲージメント向上に果たす役割は非常に大きいと言えます。
 従業員個人としては、自分自身の個人の資源を高めること、職場の同僚をサポートしたり助け合うことが、本人と周りの同僚のエンゲージメントを高めることにつながると考えられます。

 ここまで述べたことを参考に従業員のエンゲージメントを高めようと思っても、いざやろうとなると組織の中にノウハウを持った人材がいない、あるいは専門のコンサルティング会社に依頼するにも費用が予算から捻出出来ないといったこともあるかもしれません。仮に、ノウハウを持った人材やコンサルティング会社が管理職や従業員の対象に研修を実施したものの、しばらくすると研修の効果が長続きしなかったということもあるかもしれません。

 そのような場合に人材開発や組織開発の機能を組み込んだHRTechの活用は一助となるかもしれません。たとえば、職場でのコミュニケーション促進につながるWillysm(ウィリズム)、あるいは、1on1が実施出来るIromojiのようなツールによって、上司のリーダーシップ行動を強化し職場のコミュニケーションを促進することも考えられます。HRTechの活用を日常業務に組み込むことでエンゲージメント向上につながる管理職や従業員の行動が自然な形で促進され、習慣として定着することで、中長期的なエンゲージメント向上が可能となるのではないかと思います。

<参考文献>

Kahn, W.A. (1990). Psychological Conditions of Personal Engagement and Disengagement at Work. Academy of Management Journal, 33, 692-724.

Meyer, J. P., Allen, N. J., & Smith, C. A. (1993). Commitment to organizations and occupations: Extension and test of a three-component conceptualization. Journal of Applied Psychology, 78(4), 538–551.

Schaufeli, W. B., Salanova, M., González-Romá, V., & Bakker, A. B. (2002). The measurement of engagement and burnout: A two sample confirmatory factor analytic approach. Journal of Happiness Studies: An Interdisciplinary Forum on Subjective Well-Being, 3(1), 71–92.

<解説>

宮中大介(Daisuke Miyanaka)先生
宮中大介(Daisuke Miyanaka)先生

宮中大介先生 プロフィール

株式会社ベターオプションズ代表取締役、慶應義塾大学特任助教。
行動科学とデータサイエンスを応用したサービス開発を専門領域とする。格付会社にてアナリスト、EAP会社にてサービス開発部門長を経験し独立。東京大学大学院医学系研究科修了(公衆衛生学修士)。大学でポジティブ心理学やメンタルヘルスの研究にも従事している。

専門家に聞く!社員のモチベーションを向上させ、優秀な人材流失を防ぐためには(前編)

前回に引き続き、HR・ピープルアナリティクスや心理学・産業保健の知見を活用した組織に対するコンサルティングなど、健康経営や職場のメンタルヘルス対策などを専門領域とする宮中大介先生にお話をお聞きしました。 後編は優秀な人材流失を防ぐために必須のメンタルヘルス対策についてです。メンタルヘルスの不調のサインなど、マネージャー層なら押さえておきたい内容ではないでしょうか。さらに「Willysm」に期待できることなどもお話しいただきました。

Interviewee:宮中大介(Daisuke Miyanaka)先生

宮中大介先生 プロフィール

株式会社ベターオプションズ代表取締役、慶應義塾大学特任助教。 行動科学とデータサイエンスを応用したサービス開発を専門領域とする。格付会社にてアナリスト、EAP会社にてサービス開発部門長を経験し独立。東京大学大学院医学系研究科修了(公衆衛生学修士)。大学でポジティブ心理学やメンタルヘルスの研究にも従事している。

メンタルヘルスの不調のサイン

 今回は組織のメンタルヘルス対策についてお話ししましょう。 職場では社員の不調に管理職の方がいち早く気づくことが大切です。メンタルヘルスの不調のサインには仕事のミス、遅刻・欠勤の増加、身だしなみの乱れのほか、受け答えが不活性な感じになるなど、コミュニケーションにも影響が出てきます。 大企業が管理職に実施しているメンタルヘルス研修で、まず私はこのことを伝えています。社員の不調に注意している管理職は多いとは思うのですが、そこから産業医につなげておこうという具体的なアクションに移す人は少ないかもしれません。どうしても「大丈夫だろう」というバイアスがかかってしまうようです。 リモートワークが多い会社では欠勤・遅刻に気づきづらく、対面で社員の表情の確認ができないため、社員の不調に気づきにくくなっています。それが今、リモートワークを導入している企業の多くで課題として認識されているようです。 私自身が産業医や人事の会合に参加した際、やはりそれが課題になっている企業が多いと聞きました。追い打ちをかけるようにコロナ禍の精神的な影響は出始めています。学術的な調査でも、コロナ禍によるメンタルヘルスへの悪影響を報告する結果が多く出ているので心配しています。

重要度を増すメンタルヘルス対策の基本について

 メンタルヘルス対策の基本的な考え方には、1次予防、2次予防、3次予防の3つのフェーズがあります。これはメンタルヘルス対策の世界の共通認識です。

1次予防

 メンタルヘルスの不調を予防するという段階です。研修をするなどして、なるべくメンタルヘルス不調に陥らないよう、セルフケアをする、つまり未然に防ぐということです。生活習慣を整えるのも仕事のうちだという認識で取り組みます。 効果としてはメンタルヘルス不調や休職者の発生を減らすことができるため、社員にとっては最も良い対策と言えます。また、不調者や休職者の対応に伴う管理職や人事部門の負担を減る意味でも望ましい対策と言えます。

2次予防

 早期に発見する段階です。管理職の方が部下の様子に目を配り、悪化する前に産業医に相談するなど行動を起こします。不調のままパフォーマンスが落ちた状態で仕事をすると小さなミスが増え、最終的にはやってはいけない致命的な失敗につながるケースもあります。メンタルヘルス不調の影響で操作ミスやメールの誤送信なども起こりやすいため、社員の異変に早期に気づくことが重大なミスの発生を防止することになります。 早めに発見してケアすることで、結果的には休職することになっても深刻化せず休職の長期化を防ぐことにもつながり、自殺など深刻な事態を起こる前に防ぐことができるのがこの2次予防の段階です。

3次予防

 復職支援、つまり、休職者が復帰するのを支援する段階です。これをしっかりやることが非常に重要です。よくあるのがこの職場復帰が可能かどうかいう判断を楽観的に判断してしまい、せっかく復帰したのにすぐに休職することになってしまったというケースです。前向きな考え方を押し付けるのではなく、後押しするというスタンスで再休職、離職を防止するのですが、うまくいかないケースも多いので、復職支援に専門的なノウハウを持っている産業医や保健師、外部の機関と連携するほうがいいかもしれません。 本人が復職したくて焦っていても、心の健康が取り戻せたかどうかを専門家が関与して正確に見極めてもらい、職場復帰を果たしても、会社側はいきなり負荷をかけずに精神的なフォローをしながら徐々に通常勤務に戻していくいう進め方が適切だと考えています。

 メンタルヘルスが原因で休職した人は再び休職する割合が非常に高く、ほぼ半数にのぼるという結果がさまざまな調査から明らかになっています。社員数の多い大企業だと産業医もいて、人事部も休職対応のノウハウがあるかもしれませんが、中小企業ではどうしても休職=離職になりがちです。メンタルヘルス対策に関してはワークエンゲージメントの向上や人材確保という観点からも、今一度見直すことをお薦めします。

能力を発揮できる環境づくりに必要なこと

 メンタルヘルス対策の一環として、社員が能力を発揮できる環境づくりは欠かせません。社員が能力を最大限に発揮できない原因には、長時間労働や業務負荷が重すぎるということが考えられますが、実は、人材育成が不十分であることも要因のひとつとして挙げられます。レベルの高い仕事をこなせる人材が育っていないと、どうしても一部の人に仕事が偏ってしまう、あるいは上司が部下に仕事を任せられずに背負い込んで上司自身が不調になるなど、弊害がでてきます。人材のスキルを高め、それぞれが能力を発揮できるような人材育成が会社の成長につながるといわれています。 さまざまな企業と接する中で、会社の制度が社員の能力発揮を妨げているのではないかと感じることがしばしばあります。例えば評価制度が適切に機能していない場合だと、頑張り損のような形になってしまいます。契約社員でも優秀な人なら正社員に抜擢したほうがよいと思うのですが、人事制度の壁に阻まれてできないと聞いたこともありました。制度は定着して硬直化しているだけに、それが足かせになっていることになかなか気づけないものですが、社員のモチベーションを削ぐような制度は変えていくことが、最終的には会社に成長や利益をもたらすものと考えます。 そのほか、社員の能力発揮を妨げる要因で多いのは、前述した会社の制度に加えて、IT 投資の薄さです。仕事をする環境の不備がその人の能力を発揮できなくしているケースがあるのです。特にリモートワーク下ではリモートワーク環境の快適さが仕事の生産性に直結します。前編で話しましたが、DX化などIT投資は積極的に行うことを推奨したいと思います。IT 環境を整えることで人材活用の幅が大きく広がることがあります。どうしても後回しにしてしまいがちですが、ある時点で会社として思い切って投資したほうが長期的には有利だと思っています。

「Willysm」に期待できること

 「Willysm」の具体的な効果としては、まず入力することで上司と部下のコミュニケーションのきっかけになるということでしょう。職場のフィードバックにしても「お互い声をかけ合いましょう」と言うだけでは、その後形骸化することが多いので、こういったツールがあれば取り組みやすいと思います。 メンタルヘルス対策としても、メンタルヘルスの不調に気づくという点で有効です。例えば、急に入力しなくなったとか、「回答したくない」と言ってきたこと自体、不調のサインである可能性もあるので、メンタルヘルス対策の2次予防、早期発見に役立つのではないかと考えます。 また、こうしたツールを導入して運用することが「社員のマネジメントやモチベーションを重視しています」というメッセージになるので、社員の経営層や組織に対する信頼を高めることや、採用場面においても社員のメンタルヘルスや気持ちに配慮する企業であるという対外的なアピールになります。メンタルヘルスやマネジメントが重要だということは分かっていても、具体的にどうすればいいかを模索しているとしたら、そうした課題に対応できる「Willysm」は対策推進のきっかけとして最適なのではないでしょうか。 もちろん、導入して、ただ「入力してください」と言うだけでは、社員の入力率が上がらず宝の持ち腐れになってしまう場合もあります。メンタルヘルス対策でも、まず従業員の方にしっかり理解してもらうことがもっとも重要なことです。導入の際に、「会社のためにもなるし、皆さんのためにもなる」ということを社員にきちんと説明し理解してもらえれば、入力率も高くなり、結果としてメンタルヘルス対策も含めて狙った通りの「Willysm」導入効果が得られると思います。

-Willysmスタッフ一同より-

皆さん、「専門家に聞く!社員のモチベーションを向上させ、優秀な人材流失を防ぐためには」はいかがでしたでしょうか。メンタルヘルス対策といっても具体的に何をしたらいいのか分からないという方が多いと思います。本記事をご覧いただき、メンタルヘルス対策を見直すきっかけにしていただけると幸いです。 宮中先生、ご協力ありがとうございました!  
 
※写真撮影の時だけマスクを外していただきました。感染症予防のため、インタビュー時はマスクを着用し、ソーシャルディスタンスを確保しております。
専門家に聞く!社員のモチベーションを向上させ、優秀な人材流失を防ぐためには(前編)

今回お話をお聞きしたのは、HR・ピープルアナリティクスや心理学・産業保健の知見を活用した組織に対するコンサルティングなど、健康経営や職場のメンタルヘルス対策などを専門領域とする宮中大介先生です。前編・後編に分けてお届けしますが、いずれも専門家ならではの示唆に富んだお話は役立つことばかりです。
前編は主に社員のモチベーションを高める方法について、後編はメンタルヘルス対策について語っていただきます。

Interviewee:宮中大介(Daisuke Miyanaka)さん
Interviewee:宮中大介(Daisuke Miyanaka)先生

宮中大介先生 プロフィール

株式会社ベターオプションズ代表取締役、慶應義塾大学特任助教。
行動科学とデータサイエンスを応用したサービス開発を専門領域とする。格付会社にてアナリスト、EAP会社にてサービス開発部門長を経験し独立。東京大学大学院医学系研究科修了(公衆衛生学修士)。大学でポジティブ心理学やメンタルヘルスの研究にも従事している。

人材流出で企業がこうむる不利益と社員が離職を考える理由

 優秀な人材流出によって、企業にどんな不利益があるかと言えば、当然のことながら、その人が企業で働き続けていた時にもたらされていたであろう利益が失われてしまいます。また、その人の代わりの人材を採用しなくてはいけないので、採用に関する費用や人材会社に支払う費用がかかります。さらには採用した人がすぐに戦力になるとは限らないため、後任の方を受け入れてからのトレーニングなどにかかる費用も発生してきます。
 調査の結果から、社員が離職を考える理由として多いのが、

  1. ① 仕事への満足度が低い
  2. ② 対人関係に問題がある
  3. ③ 待遇が悪い

 というものです。このことが原因でストレスが溜まり、ワークエンゲージメントが低下することが離職につながるのです。

 また時代の潮流として、転職をネガティブに捉えている人が減ってきたこと、それに伴い転職の機会が増えてきていることも、離職を促進する要因になっています。
 30代~40代における転職のハードルは昭和時代ほど高くありません。転職歴があることがマイナスには作用しなくなっているのです。伝統的な有名な企業など一部の大企業は新卒の新入社員が上り詰めていくカルチャーなので一般に離職者は少ないのですが、新しいIT企業やベンチャー企業などでは門戸が広く横断的に活躍できるため、転職する人もかなりいるようです。どこの企業でも優秀な人材流出は防ぎたいと思っているはずですが、優秀な人ほど転職しやすいことも確かで、それが離職の要因にもなっています。

 昨今は大手の企業口コミサイトを参考に、転職活動を行うことが当たり前になりました。インターネットの普及によって企業の生の情報が得られるようになり、転職希望者にとっては利用価値大だと思います。一方で、企業にとっては内実が露見することになるなど、なかなか厳しい側面もあるようです。

 かつては「定年まで面倒をみる」というスタンスで雇用してきた企業が多かったと思いますが、今では雇用負担と収益向上のバランスを取ることが難しい時代になっています。経団連前会長の故・中西宏明氏が「もはや終身雇用は難しい」と発言し話題にもなりました。
(参考元:https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1905/22/news039.html

 転職はしやすくなったといえますが、自分に力がないと流されてしまうので、働く個人個人が考えなくてはいけない時代です。企業側にとっては優秀な人材が流出しないよう、常に就業環境をチェックしていかなければ厳しい時代になったのだといえるでしょう。

社員のモチベーションが高まる職場とは

 では、社員にとって魅力的な職場、社員のモチベーションが高まる職場とはどんな職場なのでしょうか。私のサーベイの経験やさまざまな研究成果を踏まえると、ハックマンとオルダムという研究者が提唱している下記の5つのモチベーションが高まる仕事の特徴がヒントになると思います。

①技能の多様性
自分がいろいろなスキルを使う場面があるということ。単調な仕事ではなく、いろいろなスキルを発揮できるとモチベーションは上がります。
②仕事の完結性
細分化された1つのパートだけを担当するのではなく、初めから終わりまで一貫してやれる仕事の完結性は大切だと考えます。やり通すことで達成感を得られます。
③仕事自体の重要性
自分自身がやっている仕事が「重要で意義がある仕事だ」と思えることもモチベーションにつながります。具体策の例は取り組みのところでお話します。
④自律性
言われた通りにやることを求められるのではなく、自分からいろいろ工夫することができ、それが反映できる仕事であること。自分で考えたり、提案ができる仕事であれば、モチベーションが高まるということが知られています。
⑤フィードバック
仕事に対してフィードバックを受けられることは重要です。上司や同僚からの直接的なフィードバックは励みになります。

モチベーションを高めるための具体策

 次にモチベーションを高めるためにはどうすればいいか、組織での取り組みと個人の取り組みを分けて考えていきたいと思います。
 会社側の取り組みとしては、同じ仕事を繰り返すような工場のラインでも、職場内で周期的にローテーションを変えるといった工夫をすることはできます。一部分のパートだけをこなす仕事では完結性を求めることは難しいですが、フィードバックの観点から、仕事の進捗や出来不出来が担当者に分かりやすく可視化される、あるいは担当者の技能を定期的に評価して技能レベルに応じてバッジがもらえるようにするなど、やりがいにつながる仕組みづくりは可能です。

 文書の中の数値を拾ってそのまま転記したり、定型の文章を手作業で作成するといった単調で工夫の余地がないような仕事こそ、私はコンピューター化の促進が必要だと思っています。人が人としてモチベーションを維持して仕事を続けられるように、先ほどのモチベーションにつながる5つの要因がどうしても成り立たないような仕事には、RPA(ロボットによる業務自動化)などを積極的に取り入れられるといいと、個人的には考えています。

 また、推奨しているのが、仕事の意義を共有する機会の創出です。週1回、月1回でよいので全社的な朝礼などで、会社が自社の現状や業界全体の動向などを伝え、「我々の部署は今、こういう立ち位置にある」ということを伝えれば、自分たちの仕事や部署の位置づけや存在意義を意識できるようになります。自分のいる業界のことを知る機会がないまま働いている人も多いかもしれませんが、自分の会社は業界でどのような役割を担っているか、自分がやっている仕事が会社の何に役立っているかを知ることで、仕事へのモチベーションも変わってくるものと思います。

 フィードバックについては、営業担当者は前線でお客様と接しているため、比較的他者から評価してもらいやすいですが、内勤のエンジニアなどはお客様と接しないので、自分が作ったものがどういう評価を受けているか、なかなか分かりません。自分が関わったサービスの評価がしっかり本人にフィードバックされることがモチベーションにつながると言われているので、直接顧客接点のない部署や職種の社員には、顧客や利用者からのフィードバックを間接的に受ける機会を作るようにしたいものです。

 例えば、システムベンダーであれば、開発したシステムに対する顧客からの評価や要望を営業部門からエンジニアに伝えるための機会を定期的に設けることが考えられます。その他では、製薬会社や医療機器メーカーにおいて、自社の医薬品や医療機器を使用している患者のインタビュー動画が、経理や人事などのバックオフィス部門を含めて全社で共有されているという事例を聞いたことがあります。

 個人的な取り組みとしては、与えられた仕事の中でも、創意工夫ができることは自律的に取り組んでみるとか、チームメンバー同士互いに声をかけ合い、評価し合うことも大事です。相互コミュニケーションを取ることが習慣化されれば、おのずと風通しのいい雰囲気が醸成されます。組織としても積極的にそうした風土を創生していくことで、社員は引っ張り上げられていくのです。

ジョブ・クラフティングについて

 「ジョブ・クラフティング」という言葉があります。これは自分から仕事を面白くしていくという考え方なのですが、最近心理学でも注目され、さまざまな業界で広がり始めている概念です。その考え方の中に「仕事に関わる人を増やしていったり、自分から人に関わりを持っていく」という視点があります。モチベーションを高めるためにフィードバックが大事だと言いましたが、同僚や上司に自分からフィードバックを求めていくという姿勢も欠かせません。それが仕事自体を面白くすることだけでなく、良好な人間関係につながり、さらにモチベーションを高めます。

 職場は人が集まって形成されるものですから、人が影響を与え合う場所です。職場の中で感情が伝播することが明らかになっているので、当然のことながらモチベーションも、人から人へ伝わっていくということになります。
 モチベーションが高まり、職場がいきいきとしていると定着率も高くなりますし、仕事のパフォーマンスも上がります。研究結果でもそれが明らかになっています。残念ながらメンタルヘルスが原因で休職される方が多い職場だと、業績が上がりづらいということも研究で分かってきています。そのためマネージャークラスの方が、社員の状態を把握しておくことは非常に重要です。

サーベイの結果から見た人材定着のヒント

 企業として人材流失を防ぐ施策に取り組む際には、まずサーベイで実態把握をすることが大切です。私は何百社とサーベイを行っているのですが、想定外のびっくりするような結果が出ることはほとんどありません。人事担当や管理職の方に結果を見せても「やっぱりね」という反応が8割くらいなのです。分かっていることが結果として出て来て、それを改善していけばいいのですが、なかなか改善できないのが実情のようです。

 また、サーベイの結果を具体的に読み解くことも、その後の改善のために重要です。例えば、「あなたの職場は仕事に成長感を感じられますか」という問いに対して、「成長感がない」という結果だったとしても職種によって「成長」の捉え方が異なる可能性があります。例えば営業担当だとしたら、より大きな顧客を担当することを成長だと考えていたり、エンジニアなら新しい技術を身につけることであったり、職種によって成長感の意味が全く異なります。
 サーベイの結果を受け取った管理職が、自分の部署を想定してなるべく具体的にサーベイを読み解き、具体的な取り組みに生かすことではじめてサーベイの結果は活かされます。

 一定以上の規模の企業であれば実施しているサーベイの内容や頻度自体は企業による差はそれほど大きくないのですが、その活かし方にはかなりの差を感じます。中には、サーベイの結果をもとにして人事の方が管理職と面談し、結果の背景を突き詰め、さらに管理職が改善のための具体的な行動を行ったまでを人事の方がフォローアップしているような企業もあります。きちんと対応している企業はそれがカルチャーとして定着していて、社員の雰囲気も違います。

 長い眼で見れば、それが業績にも表れていくのではないかと考えられます。人事制度や成果制度などはなかなか変えられないので、比較的変えやすい社員同士のコミュニケーションの在り方、上司のマネジメント行動、組織風土といった面についてサーベイで確認し、改善の必要がある項目については改善のための具体的な行動や施策を実施し、その成果をサーベイで確認するというPDCAサイクルをしっかり回していくことが優秀な人材流出を防ぐうえでの鍵になると言ってもいいかもしれません。

-Willysmスタッフ一同より-

当社サイオステクノロジーでは、 社員のモチベーションと組織の生産性向上を目的としたモチベーションマネジメントシステム「ウィリズム」を提供しておりますが、改めて「モチベーションを高めること」の必要性を強く感じました!後編もどうぞお楽しみに。



※写真撮影の時だけマスクを外していただきました。感染症予防のため、インタビュー時はマスクを着用し、ソーシャルディスタンスを確保しております。